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お知らせ

2018-12-13
■ 「歌舞伎」商標
−松竹の登録について−

 「歌舞伎」を松竹が商標登録し、「使用禁止令」を出している、との報道が「NEWS ポストセブン」にありました。
 「江戸時代から脈々と受け継がれてきた伝統芸能の「歌舞伎」を巡って、いち民間企業がその"独占権"を主張し物議を呼んでいる。果たして歌舞伎は誰のものなのか──。」という問題提起をしていますので、考えてみましょう。

1.登録及び出願の状況
 12月7日の時点で、「歌舞伎」及びそれを含む登録が29件、出願が2件ありました。
 登録のうち松竹株式会社が10件、株式会社歌舞伎座が2件、歌舞伎座サービス株式会社が1件、出願は2件とも松竹株式会社です。
 松竹関係以外のものから確認してみましょう。
 万兵株式会社:24類 木綿染織物
 株式会社天乃屋:30類 煎餅
 メリー株式会社:9類 加工ガラス(建築用のものを除く。)
 株式会社やまと:25類 和服
 アジア・ラゲージ株式会社:18類 かばん類,袋物
 カモ井加工紙株式会社:16類 文房具類
 この中で一番私たちの目に触れるのは、天乃屋さんの揚げせんべいでしょうか。
 私も大好物です。
 いずれにせよ、指定商品との関係において、舞踊演劇としての「歌舞伎」と強い関連性があるものは少ないです。
 木綿染織物と和服、がやや近しい関係といえるかもしれませんが、「歌舞伎」という言葉で、その商品の産地、販売地、品質その他の特徴等の表示と判断されるほどではありません。
2.松竹関係の指定商品・指定役務
 株式会社歌舞伎座は、基本的には劇場「歌舞伎座」を運営する会社で、その子会社である歌舞伎座サービス株式会社は劇場内の食堂売店等を運営しています。
 株式会社歌舞伎座の最大株主が松竹株式会社で、13.68%を保有しています。
 株式会社歌舞伎座は、「42類 日本料理を主とする飲食物の提供」と、「35類 印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務としています。
 歌舞伎座サービス株式会社は、「30類 ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ」を指定商品としています。
 株式会社歌舞伎座は、レストランと売店の運営に係る役務を、歌舞伎座サービス株式会社は、売店で売っている商品それ自体を指定商品としていることがわかります。
 では、松竹株式会社の、登録商標に係る指定商品・役務を見てみましょう。
 まず、2002年までに出願された7件の登録商標です。
 30類 菓子(せんべい・甘栗・甘酒・氷砂糖・みつ豆・ゆであずきを除く。),粉末あめ,水あめ(調味料),もち
 16類 新聞,雑誌
 33類 日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒4
 3類 化粧品
 25類 履物
 29類 食肉,卵,食用魚介類,冷凍食品,肉製品,加工水産物等
 30類 化学調味料,香辛料,穀類等
 傾向としては、歌舞伎座サービス株式会社同様、売店で売っている商品それ自体を指定商品としていることがわかります。
 2007年から出願の傾向が変わります。
 1件の出願に区分1〜28、31、32、34〜45と、ほとんどの区分を網羅したものが登録されています。
 その後、図形との結合商標で、43類宿泊施設の提供等を指定役務とものと、標準文字で20類家具等、21類化粧用具、台所用品等、34類喫煙具を指定商品としたものが登録されています。
 2007年に小売等役務が指定役務として認められたことと関係していると思われます。
 1件に多くの区分が含まれる登録の中で、松竹株式会社として最も重要なのは、41類だと思われますが、その指定役務の最初のものは、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」だと思われます。
 なお、出願中の2件のうち1件は、「41類 映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」を指定役務としています。
 もう1件は、8類の刃物等を指定商品としていますが、上記の多くの区分を含む登録では、8類は工具類だけだったので、補充したと考えられます。
3.「歌舞伎」を独占できるのか
 頭記の報道には、「『松竹は歌舞伎に関する商標を多数出願しており、興行や演芸の分野でも『歌舞伎』という名称の使用を管理し始めたと説明されました。』」、「『歌舞伎』を名乗ったり、公演することができないとなれば困る人々は多い。江戸時代から続く福島県の伝統芸能『檜枝岐歌舞伎』や、各地で行なわれる『子ども歌舞伎』はどうなるのか。プロレスラーの『ザ・グレート・カブキ』や、お菓子の「歌舞伎揚」の"処遇"も気になるところだ。」とありますが、果たして本当にそうなるでしょうか。
 松竹株式会社所有の商標権の範囲の「興行の企画・運営又は開催」には、「映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するもの」が含まれていません。
 現状ではその範囲での差止請求権はないと考えられます。
 そして、出願中の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画等」を指定役務とする商標は、「役務の提供の場所、質等を普通に用いられる方法で表示する」ものに該当する可能性があるので、登録を受けられるかどうかは疑問です。
 さらに、登録を受けた場合でも、商標権を行使できるかどうか。
 本格的な歌舞伎を、松竹に次いで上演しているのは、「前進座」ですが、「興行」の主体は「前進座」であり、演目が「歌舞伎様式の演劇」であるだけです。
 すると、この場合「歌舞伎」は商標の機能である「出所表示」を行っているわけではないと考えることができます。
 「商標」として使用されていなければ、「商標権」を侵害するとは言えません。
 なお、頭記報道の中の「歌舞伎揚」については、松竹関係以外の商標の検討で示した通り、天乃屋が持っているので、何の問題もありません。
 「ザ・グレート・カブキ」も、もう70歳、いくらプロレスラーの選手寿命が長いといっても、もう雑誌に心配してもらう必要もないでしょう。
 それに、多分彼ほどの「著名性」があれば、「先使用権」も認められると思います。
 1981年1月10日以来使用しており、1983年2月の凱旋帰国移行、日本でも爆発的な人気を得ましたから。
 それにそもそも、彼はプロレスラーであって、興行主ではありませんし。
 また、頭記報道には、「商標出願の背景には、2020年の東京五輪とそれに伴う外国人観光客の増加が関係していると言われています。近年は海外観光客が見たら幻滅してしまいそうな"歌舞伎もどき"の興行が散見される。松竹には五輪前に歌舞伎が誤解されかねないイベントや商品を一掃したい狙いがあるようです」とありますが、「海外観光客が見たら幻滅してしまいそうな"歌舞伎もどき"の興行」が「散見」される、というのは本当か?
 仮にそんなものがあるとしても、歌舞伎が誤解されるほどの影響力をどこに向かって発信しているというのか。
 常々、知的財産権に係る報道のレベルを何とかしてほしいと思っていたので、今回はこんなお話になりました。
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