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お知らせ

2018-10-04
■ 著作隣接権の侵害
−カラオケ音源のネット上無断公開容疑−

 カラオケ音源をネットで無断で公開した容疑で、会社員が書類送検されたという報道がありましたが、それについて、簡単に説明します。

1.刑事犯になります。
 音楽配信会社(東京都渋谷区)の音源を無断で使ってカラオケ用の動画を作成し、投稿サイトで公開したとして、警視庁は20日、都内の会社員の男を著作権法違反容疑で書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。「広告収入を得たかった。違法だと思わなかった」と話しているという。
 捜査関係者によると、送検容疑は昨年11月、音楽配信会社がインターネットで有料配信しているカラオケ用の音源を5回にわたり不正にダウンロードし、歌詞などをつけたカラオケ用の動画をユーチューブに投稿し、同社の著作隣接権を侵害したというもの。隣接権は、著作物を伝えるレコード会社などに認められた権利。(朝日新聞DIGITAL2018年9月21日より・画像も)
 男は2014年8月から「Anriのカラオケ制作室」というページにカラオケ動画を多数投稿し、多いものでは視聴回数が約260万回に上るものもありました。
 広告収入は合計で約800万円にのぼったとみられています。
 報道によれば、投稿ページには「オリジナル音源なので著作権や著作隣接権的にも安全♪歌ってみたや動画のBGMにお使い頂けます!」などとの説明があったといい、そうだとすると、「違法だと思わなかった」との供述は疑わしいと思います。
 侵害は、このように刑事罰の対象になるとともに、不法行為による損害賠償請求の対象にもなります。
2.著作隣接権
 さて、多くの方々にとって「著作隣接権」とは、耳慣れない言葉だと思います。
 著作権法89条は、著作隣接権について規定していますが、条文番号の引用が多く具体的な内容が分かりにくいので、一つひとつ説明します。
 一般的な「著作権」の原権利者は、「著作者」であり、「著作者」は「著作物」創作した者と定義され、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。
 これに対し、「著作隣接権」の原権利者は、3種類規定されており、それぞれが占有する権利(支分権といいます)の性質も異なっています。
 まず第一の権利者は、「実演家」です。
 実演家は、「俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者」と定義されています。
 具体的には、上記の規定上の4例に加え、指揮者、演出家など実演を行う者をいい、アクロバットや奇術を演じる人も含みます。
 実演家の権利には下記のものがあり、特に最初の2つは「実演家人格権」といわれます。
氏名表示権 実演家名を表示するかしないかを決めることができる権利
同一性保持権 実演家の名誉・声望を害するおそれのある改変をさせない権利
録音権・録画権 自分の実演を録音・録画する権利
放送権・有線放送権 自分の実演を放送・有線放送する権利
送信可能化権 インターネットのホームページなどを用いて、公衆からの求めに応じて自動的に送信できるようにする権利
商業用レコードの二次使用料を受ける権利 商業用レコード(市販用のCDなどのこと)が放送や有線放送で使用された場合の使用料(二次使用料)を、放送事業者や有線放送事業者から受ける権利
譲渡権 自分の実演が固定された録音物等を公衆へ譲渡する権利
貸与権など 商業用レコードを貸与する権利(最初に販売された日から1年に限る)。1年を経過した商業用レコードが貸与された場合には、貸レコード業者から報酬を受ける権利
 第二の権利者は、「レコード製作者」です。
 「レコード」は、音(著作物に限られない)を最初に固定(録音)したもの(いわゆる「原盤」のこと)で、媒体は問われませんので、CD、テープ、パソコンのハードディスクなどに録音された場合を含みます。
 そして、レコード製作者は、ある音を最初に固定(録音)して原盤(レコード)を作った者と定義されています。
 このことから、「レコード製作者の権利」を「原盤権」と呼ぶこともあります。
 レコード製作者の権利には下記のものがありますが、「人格権」に相当するものはありません。
複製権 レコードを複製する権利
送信可能化権 実演家の場合と同じ
商業用レコードの二次使用料を受ける権利 実演家の場合と同じ
譲渡権 レコードの複製物を公衆へ譲渡する権利
貸与権など 実演家の場合と同じ
 第三の権利者は、「放送事業者」と「有線放送事業者」です。
 「放送」とは、公衆が同一の内容の送信を同時に受信する公衆送信のうち、無線通信の送信をいい、「有線放送」とは、そのうち有線電気通信の送信をいい、具体的には、テレビ放送のように、番組が「常に受信者の手元まで届いている」ような送信形態のものをいいます。
 「放送事業者」と「有線放送事業者」は、それぞれを業として行う者(放送局、有線放送局)をいいます。
 「放送事業者」と「有線放送事業者」の権利には下記のものがあり、こちらも「人格権」に相当するものはありません。
複製権 放送を録音・録画及び写真的方法により複製する権利
再放送権・有線放送権 放送を受信して再放送したり、有線放送したりする権利
送信可能化権 実演家の場合と同じ
テレビジョン放送の伝達権 テレビジョン放送を受信して画面を拡大する特別装置(超大型テレビやビル壁面のディスプレイ装置など)で、公に伝達する権利
3.今回の事件の対象
 今回の事件では、送検された男は、音楽配信会社がインターネットで有料配信しているカラオケ用の音源不正にダウンロードし、歌詞などをつけたカラオケ用の動画をユーチューブに投稿したということですから、カラオケを配信する音楽配信事業者という「レコード製作者」の権利が対象です。
 「不正ダウンロード」は「複製権」の侵害で、ユーチューブへの投稿は、「送信可能化権」の侵害ということになります。
 また、著作権法第90条には、「この章(第四章・著作隣接権)の規定は、著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならない」と規定されていますので、カラオケ曲の著作権者(作詞家・作曲家)の著作権も、検討する必要があります。
 カラオケ曲を無断でサイトにアップロードすれば、原則としては、原曲の複製権や公衆送信権を侵害となります。
 ネットで広告収入を稼ぐこと自体が悪いわけではありませんが、手で触れない「無体財産権」である「知的財産権」といえど、他人のものであれば、勝手に扱うことができないのは当たり前です。
 自分のオリジナルコンテンツで勝負していただきたいものです。
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