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お知らせ

2018-07-09
■ 本年度の特許法等の改正について−新規性喪失の例外規定の改正と商標の分割要件の変更−

 5月23日、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が可決・成立し、いくつかの制度が変更されました。
 この件について、簡単に説明します。

1.新規性喪失の例外規定の改正について
(1) 新規性喪失の例外とは
 特許権が他人の特許発明の実施を排除する独占排他権であるのは、それが自己の新規な発明を秘匿せずに公開して、模倣可能な状態におくことの代償だからです。
 新規な発明を秘匿されてしまうと、公開されることによる技術の進歩が阻害され、また、重複研究などの無駄が生じるからです。
 しかし、特許出願によって公開された新規な発明の模倣を禁じておかなければ、研究開発費の回収前に安価な模倣品によって市場を蚕食されてしまうので、独占排他権としての特許権を一定期間認めているのです。
 独占排他権を付与するのですから、対象である発明は、これまでに存在しなかった新たなものでなければなりません。
 しかし、発明の早期公開という特許法の目的に寄与した場合にすべて拒絶すると、出願人に酷となり、発明者の創作意欲を減退させ、かえって発明の保護・奨励の趣旨に反することになってしまいます。
 そこで、第三者に不測の不利益を与えない範囲で、一定条件の場合には、新規性を喪失しなかったものとする例外を認めています。
 意匠法においても、同様の制度があります。
 一定の条件とは、第一に、学会発表や試験販売など、発明者本人が新規な発明を公開する場合(意匠においては創作者が新規意匠を公開する場合)です。
 第二は、発明者・創作者の意に反して、第三者が無断で新規な発明や意匠を公開してしまった場合です。
(2) 制度の変更
 従来は、新規性喪失の例外規定の適用が許されるのは、公開から6カ月以内でした。
 試験販売が行われた日から起算して、6カ月以内に新規性喪失の証明を行って出願しなければ、新規性のない出願として拒絶されていました。
 今回の改正で、特許・意匠ともにこの期間が1カ年に延長されました。
 なお、実用新案法についても特許法を準用しているため、考案の新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されます。
(3) 適用開始の期日について
 新たな規定は、平成30年6月9日に施行され同日以降の出願に適用されます。
 ただし、平成29年12月8日までに公開された発明については、同日以降に出願しても、改正法の規定は適用されませんので御注意ください(以下図参照)。
2.商標登録出願の分割要件について
(1) 改正の経緯
 昨年3月の「PPAP商標などの「タダ乗り」商標について」や、10月の「政党名と商標−第三者が登録を受けることができるか−」でも説明しましたが、特定の個人及びその人が所有する法人が、出願手数料(印紙代)を支払わずに大量の商標を出願し、後から類似の商標を出願した人が問い合わせるとそこで初めて印紙代を収めて、商標権を売ったり、ライセンス料を得たりする、という商標ブローカー的な悪質なビジネスを行っています。
 もちろん出願手数料を払わなければ、一定の期間後に出願は却下されますが、弱者保護や制度の国際的調和の観点から、不受理又は直ちに却下するわけにはいかないのです。
 そして、却下処分を受ける前に、「分割」という制度を用いてその出願を延命させていました。 「分割」とは、出願に係る指定商品又は指定役務を、一部分割して新たな出願とする制度です。
 商標登録出願の分割を行う場合、適法に行えば、新たな出願(子出願)の出願日がもとの出願(親出願)の日に遡及するという効果が生じ、出願人は親出願の日から先願の地位を確保できます。
 「適法に」というのは、これまでは以下の要件を満たすことでした。
@ 親出願が審査、審判若しくは再審に係属していること。
A 子出願が、親出願の商標と同一であること。
B 子出願に係る指定商品・指定役務が分割出願直前の親出願に係る指定商品・指定役務の一部であること。
C 子出願に係る指定商品・指定役務が、子出願と同時に手続補正書によって親出願から削除されていること。
 もっとも、上記の商標ブローカーは、上記のB、Cの要件を満たさない分割を行っていたため、子出願の出願日は遡及せず、実際の出願日となっていましたが、それでも却下はされず、出願は特許庁に係属していました。
(2) 改正の内容
 そこで、今回の改正で、以下の要件が加えられました。
 D 親出願の出願手数料が納付されていること。
 これにより、出願日の訴求の要件を具備するかどうかにかかわらず、親出願の出願手数料が納付されていない子出願は却下され、特許庁に係属しないことになるため、「延命」することができず、第三者の出願がこのような不正な出願の拒絶理由となって、ブローカーとの交渉が行われる機会を相当に限定することができるようになりました。
(3) 適用開始の期日について
 新たな規定は、平成30年6月9日に施行され同日以降の出願に適用されます(以下図参照)。
 従来から特許庁は、このブローカーの先願を引用して拒絶理由を通知する際には、出願手数料未納であるから、却下後は先願が消滅する旨を記載していましたが、今後はそれもほとんどなくなることでしょう。
 しかし、そもそも出願手数料未納を理由に却下する際には、書留でその事前通知を行う必要があり、特許庁には手間・費用の面で莫大な負担がかかっていました。
 当然他の出願の処理の遅れにもつながっていたはずで、非常に迷惑なことだったのです。
 それにしても、一個人が、ユーザーフレンドリーな制度を利用してブローカー行為を行うことから、法律まで変えてしまうとは……。
 弱者保護等の制度の悪用をする者がいると、本来保護されるべき人への保護が減じることもあります。
 このようなことは厳に慎まなければいけません。
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