HOME > お知らせ

お知らせ

2018-06-05
■ キリンラーメンの「大人の事情」−商標の類否判断、先使用権と普通名称化−

 5月28日、小笠原製粉の公式ウェブサイトに、上記の発表がなされました。
 同日付の毎日新聞サイトによれば、飲料大手「キリン」と商標権を巡りトラブルになっており、こうした背景から名称変更を決めたとみられる、と報道されています。

 この事件について、いくつかの視点から説明し、商標に関わるいくつかの問題を論じようと思います。

1.商標権について
(1) 小笠原製粉の商標権
 【登録番号】 第5966748号
 【登録日】 2017年7月28日
 【出願日】 2016年11月30日
 小笠原製粉は、上記の登録商標法を所有していますが、図形のみで、「キリンラーメン」の文字については、商標権を有していません。
(2) キリンの商標権
 キリンは多数の商標権を所有していますが、「キリンラーメン」の商標が使用されている「穀物の加工品」と類似の指定商品の登録商標では、以下が一番古いものとなります。
 【登録番号】 第2048648号
 【登録日】 1988年5月26日
 【出願日】 1985年9月4日
 小笠原製粉は「キリン」の称呼を生じる商標権を所有しておらず、その他にも登録を阻却する先行商標もなかったことから、審査を経て登録されています。
(3) 類否判断について
 小笠原製粉の使用商標「キリンラーメン」の内、「ラーメン」はその商標が使用されている商品の普通名称となりますので、類否は原則として「キリン」の部分で判断されることになります。
 すると、外観は類似とはいえませんが、「称呼」は「キリン」で同一、観念も首の長い動物の「キリン」又は想像上の神獣「麒麟」となり、同一ですので、両商標は類似と判断される可能性が高いと思います。
 そうすると、小笠原製粉は商標権の侵害により、商標の使用差止や損害賠償を請求されることがあり得ます。
2.先使用権について
(1) 小笠原製粉の使用状況
 「50年間地元で愛された」とありますが、小笠原製粉は1965年に愛知県西三河地方を中心に「キリンラーメン」を発売し、地元のソウルフードとして高い知名度を誇ったものの、競争激化で1998年に生産休止に追い込まれました。
 しかし、その後2003年に地元の要望で1回限り、1万食限定で復活し、初日で完売すると、口コミが広まる西三河中心に限定生産ではありますが、生産を再開しました。
 そして、2010年に完全生産を再開し、全国へ展開していました。
(2) 先使用権の要件
 小笠原製粉がキリンの商標登録出願前から当該登録商標と同一又は類似の商標を、不正競争の目的でなく使用をしていた結果、その商標登録の際に現にその使用商標が被告の業務を表示するものとして周知となっていた場合等には、先使用権が認められます。
 「周知」の程度は必ずしも全国的である必要はなく,一地方の認識であっても足りると考えられています。一地方であっても保護に値する業務上の信用が形成されるからです。
 その上で、キリンの出願の際から,継続してその商品についてその商標を使用することを要するとされています。実際に使用した範囲のみに保護すべき業務上の信用は化体するものであり,また,商標が継続使用されなければ,保護に値する業務上の信用も減少するか,あるいは消滅すると考えられるからです。
(3) 要件の当てはめ
 キリンの上記登録商標は、1985年に出願され、奇しくも「キリンラーメン」が生産中止に追い込まれた1988年に登録されています。
 1965年に販売開始し、1998年に生産休止するまでは使用していたので、キリンの上記商標の出願時には使用していました。
 そして2003年に復活すると、初日で完売した事実から、周知性も獲得していたと考えることもできます。
 しかし、1998年から2003年まで、生産を中止していたことから、係属使用の要件に瑕疵があるのではないでしょうか。
 したがって、先使用権の主張は、困難であると考えられます。
3.キリンは「大人げない」のか
 一部には、地方の中小企業の商品にまで商標権を行使しようとするキリンに対し、批判めいた意見がネット上等にあります。
 しかし、商標登録を受けることができたとしても、その後の管理を怠ると、普通名称化してしまい、せっかくの商標権が行使できなくなることがあります。
 小笠原製粉の使用を看過すると、登録を受けていない「キリンラーメン」が現在は全国に展開していることから、「キリンラーメン」が普通名称化してしまう可能性もないとはいえません。
 美々卯の登録商標「うどんすき」が、普通名称化したと認められた判決(1997年11月27日の東京高裁判決(平成9年(行ケ)第62号)審決取消請求事件)もあり、相手が小さいからいいや、では済まされないのです。
 大きな事件ではないかもしれませんが、この事件は商標法上の問題がいくつか組み合わさった、なかなか面白いものです。
朝陽特許事務所 お問い合わせ−特許、実用新案、意匠、商標、著作権、不正競争防止法等、知的財産についてのお問い合わせ。

朝陽特許事務所のご案内

朝陽特許事務所(ちょうよう)−東京都港区にある特許事務所。

■ 当事務所は、社内に独立した知財部門を設けることが難しい中小企業向けの特許事務所です。

<取扱業務>
・ 特許・実用新案・意匠・商標の出願代理
・ アイディア活用等のご相談
・ 知的財産権の活用コンサルティング
・ 知的財産権等についての講演・セミナー講師

<所在地>
〒105-0003
東京都港区西新橋1-22-4
Space R 3階
TEL 03-6457-9671
FAX 03-6457-9672
URL http://www.choyo-pat.jp

 大きな地図で見る