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お知らせ

2018-04-10
■ 投稿者の情報開示−著作権侵害アップロードについて−

 映画を見に行くと、頭の代わりにカメラが首の上に乗っているあの人が出てくる動画で、著作権侵害を戒めています(画像はhttp://www.eigakan.org/legal/より)。

 後半は違法にアップロードされた著作物のダウンロードについても違法な旨を訴えています。

 しかし、違法にアップロードされたことを「知らずに」ダウンロードした場合は、法には触れないことになっています。
 つまり、ダウンロードした人を追いかけても徒労になる可能性が高いので、やはり違法なアップロードを差し止めなければ実効は上がりません。

 今回は、今年の2月に東京知財で下されたそのような目的の訴訟の判決を通じて、原告の主張すべき事項と、それについての司法の判断例について、考えてみます。

1.問題の所在
(1) 著作物の不法アップロード
 「著作者」はその「著作物」についての「著作権」を、その著作物を創作したときに自動的に取得します。
 著作権は無体財産権で、譲渡等により権利を移転させることは可能です。
 著作権者の権利は、まず「複製権」すなわちコピーすることができる権利ですが、そのほかにいくつか「支分権」と呼ばれる、特定の行為を占有する権利があります。今回問題になるのは、「公衆送信権」です。
 公衆送信行為とは、著作権法において「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信」をおこなう行為を言います。
 その中で、「公衆からの求めに応じ自動的に行う送信」を「自動公衆送信」と言います。
 具体的には、インターネット上のサーバに著作物を格納(アップロード)し、利用者がアクセスすることによって著作物が送信されるような場合がこれにあたります。
 この規定により、著作権者以外の者が著作物の公衆送信を行う行為は制限されています。
 ところで、「複製権」であれば、原著作物のコピーを販売等した者は、海賊版を所持・販売する行為などから特定することが比較的容易ですが、著作物がネット上にアップロードされた場合、この行為を誰が行ったのかを特定することを自力で行おうと思えば、当該サイトに対し、ハッキングを行う必要があります。
 違法な行為に対してとはいえ、違法な行為で解決をはかることは認められていません。
 そこで、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)」により、著作権侵害の被害者は、損害賠償請求権の行使に情報発信者の氏名や住所などが必要である場合など、正当な理由がある場合には、情報開示をプロバイダに対して求めることができるようになっています。
(2) 当事者の関係
 著作権を侵害された著作権者は、通常であれば侵害を行った者に対し、行為の差止めや、その行為によって生じた損害の賠償を請求することができます。
 しかし、その侵害を行った者の情報開示を求める場合は、プロバイダに対して、請求する必要があります。
 そこで、このような裁判の原告は、映画の著作物を製作するビデオソフト,DVDビデオソフトの制作及び販売等を業とする者となり、被告は、インターネットサービス等の電気通信事業を営む株式会社となります。
2.原告の主張すべき事項
(1) アップロードされたものが「著作物」であること
 自称「著作者」が作成したデータを他人が無断でアップロードしたとしても、それが、例えば防犯カメラの映像等、撮影者の創作性が発揮されていないものであれば、「著作物」とは認められず、したがって「著作権」の適用範囲とはなりません。
 ただし、実際はこの点は明白であるためあえて主張されない場合が多いです。
(2) 原告がアップロードされた著作物の「著作権者」であること
 他人の著作物についての権利を主張することは当然できませんから、原告はアップロードされた著作物の著作権者であることを証明しなければなりません。
(3) アップロードされたのが原告の著作物の「複製」であること
 原著作物のすべてでではなくとも、一部であっても「著作物」の「複製」に著作権者の権利が及びます。
(4) 発信者情報の開示を受ける必要性があること
 上記のプロバイダ責任制限法には、以下のように規定されています。
第4条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
 一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
 二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

 これに従い、@侵害の事実とA損害の発生を立証する必要があります。
3.被告の対応
 このような裁判が提起されたということは、原告が被告に対し、裁判前に開示請求を行い、それが拒否されたということだと思います。
 裁判を起こすには手間と費用がかかりますから、事前の請求なしでいきなり裁判を起こすということは考えにくいからです。
 平成29年(ワ)第39440号と、平成29年(ワ)第39441号の2件の発信者情報開示請求事件において、被告であるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社は、上記の主張に対し、「不知」、「否認」と主張し、争う姿勢を見せました。
 第三者である私たちから見ると、いちいち明白で、裁判を受ける手間と費用をかけるぐらいなら、請求を求めてしまえば簡単だったのではないかと思えてしまいます。
 平成29年(ワ)第39441号において被告は、インターネットサービス利用契約の契約者に対して意見照会をしたところ,当該契約者は本件各動画を送信した事実を認めていなかったのであって,当該契約者が本件各発信者であるとは認められない旨主張しています。
 これは私の想像ですが、自社の顧客の主張に対して疑義を差し挟んで発信者情報を開示して、顧客から訴訟提起されるリスクを取るより、裁判所の命令に従った形をとるという選択をしたのではないでしょうか。
4.裁判所の判断
 両判決ともに、被告の主張は全く認めず、原告の主張を認め、発信者情報の開示と裁判費用の負担を被告に命じています。
 これらの例から、映像商品の複製をアップロードされた場合、プロバイダへの開示請求だけで速やかに開示されるとは限らないので、速やかに訴訟に移り、発信者名を開示させることが早道であるようです。
 ひと手間余計にかかってしまいますね。
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