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お知らせ

2017-12-04
■ 商標権の侵害と損害賠償−類否判断と損害の発生−

 怪盗グル―のシリーズ、私が「声で声優の顔が浮かんできてしまう配役をすべきでない」と確信した作品なのですが、それはさておき、ミニオンは結構好きで、Facebookのスタンプでも愛用しています。
 そのミニオンがらみで、以下のような問題が起こっています。

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が販売する人気キャラクター「ミニオン」の関連商品が、若者向けファッションブランドと類似したデザインで商標権を侵害しているとして、大阪市内の男性が販売差し止めなどを求めて大阪地裁に提訴した。12日の第1回口頭弁論で、USJ側は全面的に争う姿勢を示した。
 ミニオンは2010年以降に公開された米アニメ映画シリーズに登場するキャラクター。「ミニオン語」を話すゴーグルをかけた黄色い生き物で人気を集めている。
 訴状などによると、男性は個人で服飾雑貨の製造・販売を手がけ、08年以降にブランド名「BELLO」「Bello」を商標登録。イタリア語で「いい物」を意味し、帽子や下着を大手百貨店やインターネットなどで販売している。
 USJは14年からミニオンの絵柄の商品を販売。下着や帽子などの一部に「BELLO」の文字を使い、これに対し男性側は販売差し止めと1500万円の損害賠償を求めている。
 USJ側は「BELLO」(ベロー)は「こんにちは」を意味するミニオン語だと説明し、字体も異なるため客の混同はなく、売り上げはミニオンの知名度によると反論。USJは取材に「詳しいことは裁判で説明する」としている。
 (毎日新聞2017年10月13日より)

 商標登録の内容は以下の通りです(第5316480号)。

 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
 第18類 犬の首輪,犬の胴着,キャリーバック,リュックサック,ショルダーバック,ウエストポーチ,財布,名刺入れ,かばん
 第25類 下着,トランクス,アンダーウエアー,洋服,帽子,手袋,マフラー,ストール,バンダナ,耳覆い,靴下
 【称呼(参考情報)】ベッロ、ベルロ、ベリョ、ベロ

1.商標的態様の使用であるかどうか。
 まず最初に、USJの使用態様が「意匠的効果」を目的としたもので、商標的使用ではない、と判断される可能性を検討します。
 参考裁判例は、漫画『ポパイ』の絵(画)を付したアンダーシャツを販売する企業が訴えられた事件です(大阪地裁 昭和51年2月24日判決/昭和49年(ワ)第393号)。
 この判決によれば、
 本来の商標」は自己の営業に係る商品をほかの商品と区別するための「目じるし」として、自他商品を識別することを直接の目的として付されるもので、経済的機能として出所表示機能・品質保証機能・広告宣伝機能があり、商標法ではこれらを違法に妨害する行為から法的に保護することを目的とする。
 しかし、Y製品の使用態様は、各商標のいずれもアンダーシャツの胸部中央ほとんど全面にわたり大きく彩色のうえ、表現したものである。これは表現の装飾的・審美的・意匠的効果などを狙って製造・販売され、需要者(消費者・顧客)もその表現に惹かれて購買意欲を喚起させられている事実を認めることができるため、上記で示した「目じるし」と判断するのは到底解せられないのである。また、「本来の商標」の性質からいって、えり吊りネーム、吊り札、包装袋などに表示されるのが通常である。
 また、Y製品の使用態様は、文字部分と図形(画の部分)とが融合し一体となって表示されており、文字部分は図形部分に付随した説明的付記と見るのが自然であり、文字部分のみ分離してみるのは不自然である。仮に、文字部分のみを観察しても、Xの文字は普通の書体で、特に図案化ないし模様化したものではないから、その部分が独立して意匠的あるいは装飾的機能を果たしているとは認められないが、前記の如き表示の仕方からして各文字部分が独立しあるいは付随的に「本来の商標」として、出所を表示し、自他商品識別の機能を果たしているとは認められない。

 とされています。
 今回の問題では、使用されている商品は、「トランクス」です。
 そこで、トランクスにおける「通常」の表示を調べてみます。
 BODY WILD、Calvin Kleinなどの有名なブランドのトランクスを見ると、トランクスの腰回りのベルト様の部分に、商標が表示されています。
 他のブランドでも同様の使用態様が多く見られましたので、商品「トランクス」における、ほかの商品と区別するための「目じるし」としての商標の使用態様としては、トランクスの腰回りのベルト様の部分に表示することと考えてよいと思います。
2.類否判断
(1) 参考判例
 USJの使用態様が商標的であると考えられますので、侵害の成否に関して、次に類否判断を行う必要があります。
 商標権の侵害とは、登録商標の指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務について、登録商標と同一又は類似の商標を使用することです。
 商品に関しては、「トランクス」で同一であることは明白ですので、商標同士の類否判断を行うことにします。
 参考となる判例は、登録商標「小僧」の商標権者が、「小僧寿し」チェーンを訴えた事件です(最高裁平成9年3月11日/平成6年(オ)1102)。
 まず、類否判断の基準とする3要素として、商標は、「小僧」の二文字を縦書きした標章であって、その外観は別紙商標目録記載のとおりであり、「コゾウ」の称呼を生じ、「商店で使われている年少の男子店員」「年少の僧」「あなどっていうときの年少の男子」等の観念を生ずる、を示しました。
 そして問題となった各商標について、以下のように判断しました。
 被上告人(小僧寿し側)商標一(1)~(9)、被上告人商標二(2)、(4)、(5)については、全体が不可分一体のものとして,「コゾウズシ」又は「コゾウスシ」の称呼を生じ,企業グループとしての小僧寿しチェーン又はその製造販売に係る本件商品を観念させるものとなっていたと解するのが相当であって,(中略)標章全体としてのみ称呼,観念が生ずるものであって,「小僧」又は「KOZO」の部分から出所の識別標識としての称呼,観念が生ずるとはいえない、とされました。
 また、被上告人商標三(1)~(6)については、本件商標と外観において類似せず,また標章自体は「商家で働く人物」を観念させるとしても「商家で使われている年少の男子店員」を観念させるものではなく,「コゾウ」の称呼を生ずるものでもない。」
 「本件において,Y標章三(1)ないし(6)は,小僧寿しチェーンの各加盟店において「小僧寿しチェーン」又は「小僧寿し」の名称と共に継続して使用されたことから,右各標章のみを見ても著名な企業グループである小僧寿しチェーンを想起し,右各標章から「コゾウズシ」又は「コゾウスシ」なる称呼を生ずる余地はあるが,(中略)右各標章から生ずる観念,称呼が商品の出所たる著名な企業グループである小僧寿しチェーンそのものであることに照らせば,称呼において本件商標と一部共通する部分があるにしても,需要者において商品の出所を誤認混同するおそれを生ずるものではないから,右各標章が本件商標に類似するものとはいえない。なお,Y標章三(5)の前掛け部分には「小僧寿し」の文字が横書きで記載されているが,「小僧寿し」なる標章が本件商標に類似するものといえないことは前判示のとおりであるから,Y標章三(5)に右記載があるからといって,同標章が本件商標と類似するということはできない
、とされました。
 一方、被上告人商標二(1)、(3)については、類似と認められています。
(2) 本件への当てはめ
 登録商標は「BELLO」、USJの使用商標は「BELLO!」です。
 外観の相違は「!」の有無のみ、称呼は「ベロ」「ベッロ」、「ベリョ」、「ベルロ」などが考えられますが、綴りは同じなので、同一と言ってよいでしょう。
 観念は、登録商標については出願人がイタリア語のBello(いいもの、すばらしいもの)から採ったとのことで、USJ側はHelloの「ミニオン語」だとのことです。
 ミニオンの画像と同時に使用されていることから、一概に否定できないかもしれませんが、商標それ自体から発する観念としては、通常の日本人にとって何らかの観念が生じないとも考えられます。
 類否判断の3要素を総合的に判断すると、類似と判断されるのではないでしょうか。
3.侵害の有無
(1) 参考判例
 上記判例では、
 「KOZO」に対する差止請求は認容されているが,Yとしては全国的に著名な表示「小僧寿し」を使うことができればよいのであるから,「KOZO」が使えなくなってもさして痛痒を感じないであろう。だとすれば,Xの本件商標「小僧」と極めて紛らわしい表示の使用をYにあえて認める必要はない。
 とされています。
(2) 本件への当てはめ
 一方、今回の件では、USJには代替の商標はありません。
 しかし、指定商品が同一、商標が類似となれば、形式上の侵害は認められる可能性があり、そうなれば、「BELLO!」の使用は差止となります。
 なお、差止の効果は、将来効であり、これまで販売したものに及ぶものではなく、あくまで判決確定後の製造販売が禁止されるだけです。
 過去の製造販売まで効力が及ぶのは、損害賠償です。
4.損害の有無
(1) 参考判例
 上記判例では、以下のように判示されています。
 商標権は、商標の出所識別機能を通じて商標権者の業務上の信用を保護するとともに、商品の流通秩序を維持することにより一般需要者の保護を図ることにその本質があり、特許権や実用新案権等のようにそれ自体が財産的価値を有するものではない。したがって、登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標として使用した場合であっても、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべきである。
 これを本件についてみると、 (中略) 上告人は昭和49年11月ころから大阪市を中心とする近畿地区において「おにぎり小僧」の名称で持帰り用のおにぎり、すし等の製造販売を始めたが、被上告人ないしその傘下の加盟店の店舗の所在する四国地域では本件商標を使用しておにぎり、すし等を販売したことがない、(二) 遅くとも昭和53年には、「小僧寿し」の名称は、小僧寿し本部又は小僧寿しチェーンの略称としてだけでなく、小僧寿しチェーンの製造販売に係る本件商品を示すものとしても著名となっており、(中略)いずれも業務上の信用及び顧客吸引力を有していた、(中略)そうすると、被上告人の本件商品の売上げは専ら小僧寿しチェーンの著名性、その宣伝広告や商品の品質、被上告人標章 (中略)の顧客吸引力等によってもたらされたものであって、(中略)上告人の販売する商品の売上げにつき損害が生じたものと認められないことはもちろん、上告人には本件商標権につき得べかりし利益の喪失による損害も何ら生じていないというべきである。
(2) 本件への当てはめ
 USJのトランクスの売り上げは、BELLO商標の顧客誘引力によるものではなく、もっぱら人気アニメ「ミニオンズ」シリーズの人気、登場するキャラクター「ミニオン」の人気によるものであり、USJのトランクスの販売によって商標権者の得べかりし利益の損失による損害も何ら生じていない、と判断するのが適切ではないでしょうか。
5.まとめ
 商標権に基づく差止請求は、認められる可能性があります。
 しかし、差止の効力は判決確定後のみですので、それまで在庫販売をしたものには及びません。
 損害賠償が認められる可能性が高い場合は、在庫を販売するとその分損害額も上昇することになりますが、今回は損害が認められる可能性はさほど高くないのではないかと思います。
 この訴訟で「BELLO」ブランドの知名度や価値が上がるとすれば、多少の意味はあるかもしれませんが、手間や費用との見合いではないでしょうか。
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