HOME > お知らせ

お知らせ

2017-11-07
■ 音商標−言葉の入らないメロディー等の登録の難しさ−

 大幸薬品の「正露丸」のコマーシャルに使われるラッパのメロディーは、元々旧日本軍の「食事ラッパ」のメロディーです。
 私は幼少時に、海軍兵学校出身の父から「兵学校のおかずはニンジンにダイコン、時には混ぜ飯ライスカレー」という歌詞で歌ってもらった記憶があります。
 このメロディーが登録商標になりました。
 2015年4月から始まった動き・ホログラム・色彩のみ・音・位置という新しい商標制度ですが、特許庁によれば、これまでに、約1,600件の出願を受け付け、300件を超える登録がなされているとのことです。

 先般の報道では、「正露丸」の音商標がクローズアップされていましたがインテルとBMWについても、登録が認められました。
 こちらのサイトで、実際に聞くことができます。
 https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/otoshouhyou-hatsutouroku.htm

 さて、このような新しい商標制度が始まってから、もう2年半が経過しましたが、いわゆる「音楽的要素のみからなる音商標」について、登録が認められる旨の判断がなされたのは初めてです。
 この「音楽的要素」とは、メロディー、ハーモニー、リズム又はテンポ、音色等をいい、「のみからなる」というのは、「言葉(歌詞)」要素を含まないということです。
 この件について、簡単に述べることにします。

1.2015年4月1日の出願
(1) 新制度初日の出願
 新制度初日に当たる2015年4月1日に出願された商標は775件で、そのうち新しい商標について、290権の出願がありました。
 音商標はそのうち68件です。
 その中で、登録番号が一番若いのは、登録第5804299号、出願人は久光製薬株式会社です。
 楽譜で以下のように表示されています。
 2015年4月の記事にも書きましたが、音商標制度が既にある海外で登録されていいたのと同じものです。
 登録を受けたのは、同年11月6日です。
 大幸薬品もラッパのメロディーをこの日に出願しています。
 ちなみに、同社は「クレベリン」についての音商標も、同日に出願しており、やはり同年11月6日に登録を受けています。
 同じ日の出願だったのに、ラッパのメロディーは、どうして登録まで何倍もの時間がかかったのでしょうか。
(2) 音商標の拒絶理由
 音商標の拒絶理由としては、主に2つあります。
 一つは、その商標が、その商品の産地、販売地、品質等又はそのサービスの提供の場所、質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(いわゆる記述的商標)である場合(商標法第3条第1項第3号該当)、もうひとつは、その商標が、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標である場合(商標法第3条第1項第6号該当)です。
 この第3条第1項第6号に該当する商標の例は、審査基準上以下のようになっています。
 需要者にクラシック音楽、歌謡曲、オリジナル曲等の楽曲としてのみ認識される音
  (例) CM等の広告において、BGMとして流されるような楽曲
 即ち、正露丸のCMにおいてBGMとして流されていたラッパのメロディーは、これに該当することにより、商標登録を受けることができない、という拒絶理由を受けたと考えられます。
(3) 早期登録を受けられた商標について
 ではなぜ、「ヒサミツ」や「クレベリン」は登録を受けることができたのでしょうか。
 これらは、メロディーだけで判断されたのではありません。
 「久光」や「ヒサミツ」は、登録第1077390〜1号をはじめとして、多くの関連登録を得ていますし、「クレベリン」も登録第4994237〜44号等の登録を受けています。
 つまり、「音楽的要素」以外の要素が、「識別力」を有していると認められて、登録を受けることができたと考えられます。
2.登録を受けるまで
(1) 拒絶理由の解消法
 審査基準において、第3条第1項第6号に該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っているものについては、本号の規定に該当しないものとする、とされています。
 つまり、その商標が使用され(この場合は、TVCMで流されるなどして)、消費者がその音を聞いただけで、「あっ、正露丸(大幸薬品)だ」と思うぐらいに有名になっていれば、登録を受けることができるわけです。
 理屈でいうのは簡単なのですが、これはなかなか厄介です。
 審査官の主観だけで登録査定するわけにはいきませんから、出願人は、ラッパのメロディーが元々有名であり、今も有名であり続けていることの、客観的な証拠を提出することが必要となるのです。
(2) 拒絶理由解消の作業
 毎日新聞によれば、大幸薬品は、ラジオの民間放送が始まった1951年からCMに使用していたそうです。
 大幸薬品で商標登録を担当した森田総務部長は「インパクトのある音を選んだのでは」と推測しているとのこと。
 特許庁には、10年ごとにCMの期間や地域などを示す資料を提出し、全国的な知名度の高さをアピール、しかし、5年ごとの資料を追加で求められるなど、音だけで商品をイメージできると証明する必要がありました。
 森田部長らは各地域の膨大な放送記録などを提出しました。
 「登録までこんなに長くかかるとは思わなかった」と振り返っているそうです。
 登録を受けて、今後は「動画などでも新たな使い方を考えていきたい」と話しているそうです。
3.まとめ
 元々、登録商標は、視覚で認識できるものだけでした。
 もちろん、文字商標を読み上げることにより、聴覚で認識されてきましたし、だからこそ、商標の類否判断の要素として「称呼」が重要な役割を果たしてきました。
 しかし、音商標の要素は、「称呼」だけではありません。
 「称呼」を載せるメロディーや、様々な擬音も、需要者(消費者)にとっての「識別力」を有している場合、登録を受けて保護されるべきものでした。
 ただし、音商標については、特有の審査基準がありますので、それを理解した上で、出願する必要があります。
 今回、音楽的要素のみの商標が登録されたことにより、いわゆるサウンドロゴの登録の基準が出されてことになります。
 サウンドロゴの活用がこれによってさらに広がることでしょう。
朝陽特許事務所 お問い合わせ−特許、実用新案、意匠、商標、著作権、不正競争防止法等、知的財産についてのお問い合わせ。

朝陽特許事務所のご案内

朝陽特許事務所(ちょうよう)−東京都港区にある特許事務所。

■ 当事務所は、社内に独立した知財部門を設けることが難しい中小企業向けの特許事務所です。

<取扱業務>
・ 特許・実用新案・意匠・商標の出願代理
・ アイディア活用等のご相談
・ 知的財産権の活用コンサルティング
・ 知的財産権等についての講演・セミナー講師

<所在地>
〒105-0003
東京都港区西新橋1-22-4
Space R 3階
TEL 03-6457-9671
FAX 03-6457-9672
URL http://www.choyo-pat.jp

 大きな地図で見る