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お知らせ

2017-08-07
■ 商標登録とブランディング−名前で売り上げが変わります−

 大前提として申し上げますが、品質の低い商品や、質の悪いサービスが、ネーミングだけで「売れ続ける」ことはありません(一時的に売れることはあるかもしれませんが)。
 ブランディングは、高い品質の商品や質の良いサービスを、より多くのお客さまに提供するために行うものです。
 ネーミングや広告・宣伝は、魔法ではありませんので、たとえ一時的に話題になったとしても、肝心の品質・質を補完するものではありません。
 かえって、一商品の事故により、企業イメージ全体を傷つけてしまうことすらあります。
 しかし、なかなか売れなかった高品質の商品が、ネーミング、ブランディングでヒット商品となった例もあり、企業イメージ全体を押し上げることにもつながります。
 いくつかそのような例を見てみることにしましょう。

1.名前を変えて大ヒットした例
(1) 通勤快足
 株式会社レナウンは、1902年(明治35年)に大阪で衣料品の販売を手掛ける「佐々木商会」として設立され、その後メリヤスを中心とした繊維商品の製造も手掛けるようになりました。
 余談ですが、メリヤスは漢字で莫大小と書きます。
 莫は「ない」という意味で、つまり莫大小とは大小がない=伸縮性に富む、という意味です。
 かなり早い時期からブランディングに敏感だったと見え、1922年(大正11年)に、イギリスの皇太子エドワードが訪日した際の御召艦「レナウン」にあやかり、翌年から「レナウン」を商標として用い始めました。
 意味は、「高名、名声、声望」などです。
 ちなみに、グループ内の「ダーバン」も、「レナウン」の供奉艦名から採られています。
 その名の元となったのは、“Sir Benjamin D'Urban”という人名でした。
 現在の登録状況を見てみると、一番古いものは以下の2つで、1948年(昭和23年)に出願され、翌々年に登録されています。
 さて、そのレナウンが1981年に「抗菌防臭」加工糸で速乾性や消臭性をなどの機能を備えた靴下を発売しました。
 その名も「フレッシュライフ」。
 初年度に3億円を売り上げましたが、その後はじり貧となります。
 そこで、形勢逆転のために87年にネーミングを変更しました。
 それが、「通勤快足」です。
 「通勤快速」と、足の蒸れやにおいを防いで快適にする「快」をかけたものだと思います。
 87年にいきなり13億円を売り上げ、89年には45億円に達しました。
 現在でもレナウンの主力商品の一つなのではないでしょうか。
  は、レナウンの登録商標で、86年に出願され、88年に登録されました(商標登録第2093963号)。
 こうやって、商品の売り上げに大きな影響を及ぼす商品名を、商標登録を行うことによって守っています。
(2) 鼻セレブ
 王子ネピア株式会社は、1971年に王子製紙株式会社の全額出資により、 家庭紙の総販売会社「王子ティシュ販売株式会社」として設立されました。
 当初、ボックスティッシュ、トイレットロール、ペーパータオルを主力商品としています。
 その後、紙おむつやおしりふき、ウエットティッシュなどを次々に発売していきますが、1970年代後半から、杉花粉によるアレルギーであるいわゆる「花粉症」が急増します。
 とにかく鼻水がとめどなく出続けるため、普通のティッシュで鼻をかんでいると、鼻の頭が腫れてしまうという事態が問題となりました。
 そこで開発されたのが、ウエットタイプのボックスティッシュです。
 その名も、「ネピアモイスチャーティッシュ」、1996年に同業他社に先駆けて発売しました。
 ネピアが出している湿ったティッシュ、というストレートなネーミングです。
 せっかく先行したのに、うまくアピールできずに、他社の進出で3番手に後退してしまいました。
 そこで、形勢逆転のために2004年にネーミングを変更しました。
 それが、「鼻セレブ」。
 上品でお肌の敏感なお鼻を普通のティッシュでかむと、すぐに腫れてしまうので、セレブ向けのティッシュをご用意しました、というわけです。
 名前を変えただけで売り上げが3割増えたそうです。
 ちなみにウエットティッシュではなく、皮膚の皮脂成分として元来含まれている天然由来スクワランといううるおい成分に加え、天然グリセリンで取り込んだ空気中の水分をソルビットでキープすることで、肌との摩擦を軽減させているとのことです。
 お鼻セレブは甘い、といわれていますが、ソルビットが原因ですね。
 ティッシュは食物ではないので、食べないでください。
 現在では「おしりセレブ」などというトイレに流せるウエットティッシュもあり、「セレブ」といえば「ネピア」(ティッシュの世界では)、という勢いです。
 
 鼻セレブは、王子ネピア株式会社の登録商標で、2004年に出願され、同年中に登録されました(商標登録第4823800号)。
 鼻セレブシリーズについて、他にも登録されています。
 ちなみに、おしりセレブは2011年に出願され、同年中に登録されました(商標登録第5443110号)。
2.同じ「商標」が登録されている
 ところで、実は他にも「通勤快足」という商品があります。
 「商標登録」しておけば、他人が似たような商標を使用することはできないんじゃないの?
 そのマークはこのようなものです。
  と  が違うから似ていないと判断されたのでしょうか。
 そんなことになれば、ちょっと字体を変えるだけで類似の商標権が併存してしまい、様々な不都合が起こります。
 商品を見てみましょう。
 使用されている商品は「靴」でした。
 実は、靴の方が先に出願・登録されています。
  は、84年に出願され、87年に登録されました(商標登録第1956580号)。
 字体を指定しない「標準文字」では、2008年に出願され、翌年に登録されています(商標登録第5209770号)。
 なぜこのようなことが可能なのかを理解していただくために、ちょっと商標権の構成をご説明いたします。
 「商標」を英語で言うとTrade Mark、つまり商売用の「マーク」です。
 商標権を構成する一方の要素がこの「マーク」です。
 商売ですから、商品なりサービスを提供してお金をいただきます。
 他人によって同じような、又は、似たような「マーク」が、同じような、又は、似たような「商品又はサービス」において使用されると、お客様はその出所が分からず迷ってしまい、提供側も、それまでの努力で培った信用を棄損されたり、タダ乗りされたりすることになります。
 それでは流通秩序が混乱してしまうので、商標登録制度により、類似の商標権が併存しないようにしています。
 商標登録出願の願書には、出願に係る商標(マーク)と、「指定商品又は指定役務」を記載しなければなりません。
 マークと商品又はサービスが、両方とも登録商標と似ている場合、出願は拒絶され、そのような商標の使用を行うと、商標権の侵害となります。
 逆に、マークが類似していても、指定商品又はサービスが非類似であれば、登録を受けることができ、侵害にもなりません。
 下記のように、指定商品が非類似なので、同一の商標が登録されている例は、多く見られます。
 もちろん、指定商品等が同一でも、マークさえ非類似ならば、登録を受けることができ、侵害にもなりません。
3.商標権は「早い者勝ち」の世界、しかし……。
(1) 商標権とは
 商標権は、商標登録出願を行い、出願が登録査定を受け、登録料を納付すると発生します。
 登録を受けられない「許折理由」は、先行登録商標と同一又は類似の商標を、その指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務を指定して出願した場合などです。
 使用実績、周知性や著名性は問われません。
 登録を受けると、その商標を出願において指定した商品・サービスに使用することができ、また、ライセンスすることもできます。
 そして、他人が登録商標と同一又は類似の商標を、その指定商品・役務と類似した商品・サービスに使用することを禁止することができ、使用されて損害が発生すれば、その賠償を請求することができます。
 自己の営業に関わる「表示」を模倣された場合、不正競争防止法の適用を主張したり、「パブリシティ権」、「肖像権」や「著作権」を主張することで、使用の停止や損害賠償を請求する途もありますが、それを確定させるためには、裁判を経なければなりません。
 商標権は、郎録によって法的効力(商標権者の権利)が確定していますから、その点については争おう必要がありません。
 登録の事実は、公報によって公開されていますから、抑止力もあります。
 先行商標を引用して出願が拒絶されるのは、その先行商標の「出願日」が自分の出願日より早かった場合です。
 つまり、早いもん勝ち、です。
 自分が既に使用している商標であっても、その商標が出願されていなければ、他人が出願して登録された場合、他人の商標権によって使用が制限されることになります。
(2) 先使用権とは
 もちろん、登録を受けていない商標であっても、流通秩序の維持のため、ある程度の保護は受けられるようになっています。
 例えば、先行登録商標とは類似していなくても、先行未登録周知商標との類似していることを理由に、出願が拒絶されることもあります。
 また、登録商標の範囲と抵触する使用をしている者は、その登録商標の出願日前に、所定の周知性を獲得していれば、先使用権が認めらます。
 しかし、この「周知性」を獲得すること、そして、獲得した周知性を、裁判で「証明」すること、には、実務的にかなり高いハードルがあり、裁判で周知性を認めさせるためには。手間と費用が、出願とはけた違いにかかります。
 条件となる商標権は、商標登録出願を行い、出願が登録査定を受け、登録料を納付すると発生します。
 「ひかり商標侵害事件(平成22年(ワ)1232)東京地裁平成23年10月28日」において、原告が平成17年11月17日に出願した商標の商標権の効力が、被告が平成17年9月27日に使用を開始した商標の及ぶ、という判決がありました。
 被告の商標の出願日前の使用期間は2カ月に満たず、広告宣伝も期間、回数、対象地域が限定的であり、先使用権が認められるほどの周知性を獲得していたとは認められませんでした。
 その結果、使用の差止めだけでなく、1千万円以上の損害賠償も命じられたのです。
 実務的には、新商品名・サービス名、あるいは設立予定の新会社の名称などは、決定前の候補の段階で、先行商標調査を行い、登録を受けることができるものを決定して、発表前に出願しておくべきです。
 毎年秋に新しいシリーズが始まる「仮面ライダー」の商標は、春の内に決定され、5月には出願されています。
 ブランディングしようとしたら、他人が使用していたり、他人の登録があったりすれば、タダ乗りされたり、一歩間違えると損害賠償まで支払わなければならなくなります。
 独占排他権である商標権は、ブランド戦略には不可欠です。
 商標権など、登録により発生する知的財産権は、「先んずれば人を制す」攻撃と、「転ばぬ先の杖」という防御の両面を兼ね備えたツールなのです。
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